
BigQuery×Pythonによるデータサイエンスでデジタル広告を次のステージへ。AI時代のマーケターとして描く“生存戦略”を聴く
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クニモト
クニモト
福井大学出身。前職では、客先常駐型のデータアナリストとして臨床研究データ分析、Web運用分析、営業データ可視化など多業界での分析業務を経験。自分が提案した施策の実装状況や成果が見えないことへのもどかしさから、充実したデータ基盤とPDCAサイクルによる成果創出を求めクーリエへ転職。現在は「みんなの介護」のデジタル広告運用を担当し、Googleリスティング広告のクリエイティブ改善でCPAを大幅に最適化させた。
データ分析の成果が見えない環境への違和感から転職を決意
クニモトさんは前職でクライアント常駐型のデータアナリストをされていたそうですね。どのような業務を担当されていたのですか?
前職では、データアナリストとしてクライアント企業に常駐し、約半年間のスパンでさまざまな業界のデータ分析業務を担当していました。
主な業務は、膨大なデータから価値ある情報を抽出し、クライアントの課題解決や意思決定を支援することでした。臨床研究データの分析から始まり、Webサイトの運用分析、営業データの可視化など、本当に多岐にわたる業界で分析を経験させていただきました。
特に印象深かったのは、臨床研究のプロジェクトですね。患者さんのアンケート結果と実際のモニタリングデータを組み合わせて分析したところ、これまで見落とされていた重要なインサイトを発見できたんです。その発見が論文になる可能性があると言われたときは、データ分析の価値を実感できて嬉しかったです。
やりがいのある仕事だったと思いますが、転職を考えるようになったきっかけは何だったのでしょうか?
一番大きな理由は、自分が提案した施策の実装状況や成果が見えないことへのもどかしさでした。
クライアント業務の性質上、分析結果を提供した後、それが実際に活用されたのか、どんな成果につながったのかという情報が共有されないことが多かったんです。せっかく価値あるインサイトを見つけても、その後の実効性を確認できないまま次の案件に移るという繰り返しでした。
また、クライアントによってはデータ収集の基盤が整っていなかったり、分析材料となるデータが不足していたりして、本来できるはずの分析に限界があることも課題でした。
そして何より困ったのが、同じ職種のメンバーとの意見交換機会がほとんどなかったことです。一人で作業することが多く、自分の分析手法が正しいのか、もっと良いアプローチがあるのかを相談できる相手がいませんでした。これでは成長に限界があると感じるようになったんです。

数ある転職先の中で、なぜクーリエへの入社を決めたのですか?
決め手は、面接で取締役の須貝から聞いたBigQueryの話でした。「業界No.1のプラットフォームに蓄積された膨大なファーストパーティデータを分析し、スピード感を持って施策立案~実行まで一気通貫で推進できる」と教えていただき、これまで経験したことのない充実したデータ環境に強く魅力を感じました。
クーリエには、データを重視する企業文化が根付いており、データ分析から施策実行、結果分析、次の施策立案という一連のPDCAサイクルが確立されています。前職で感じていた「提案して終わり」ではなく、最後まで責任を持って関われる環境があると確信しました。
それから、同じデータ分析を扱うメンバーが多数在籍していることも大きな魅力でした。意見交換を通じて切磋琢磨し、専門性を高められる環境は、まさに私が求めていたものでした。
充実したデータ環境でデジタル広告の成果を最大化
入社後はどのような業務を担当されているのでしょうか?
現在は、デジタルマーケターとして「みんなの介護」のデジタル広告運用におけるデータサイエンス領域を一手に担っています。具体的には、Google Ads、Yahoo!広告を中心に、複数のキャンペーンを同時並行で分析・最適化しています。
日々の業務では、まず朝一番にBigQueryから前日の広告パフォーマンスデータを抽出し、CTR(クリック率)、CPA(顧客獲得単価)、CVR(コンバージョン率)の3つの主要KPIをダッシュボードで可視化します。
特に注力しているのが、カスタマーが介護施設を選ぶために行う情報収集・比較検討の際の介護施設検索での行動パターン分析です。例えば、検討期間が長期化する属性に対応するために以下のような戦略を立てました。
例えば、「有料老人ホーム 東京」というキーワードでは平均検討期間が2、3ヵ月と長期化するため、ファーストタッチから資料請求までの中間コンバージョンを細かく設定し、各ステップでの離脱要因を特定しています。
環境面では、前職と比較して以下のような実感があります。
リアルタイム施策調整による高速PDCA
・前職のクライアントワーク:分析業務は「月次レポート提出」で完結
・クーリエ:リアルタイムでの施策調整が可能な環境
PDCAサイクルを日次・時には時間単位で回転させる高速運用を確立
➡「分析の先にある事業成果」を直接体感
数値の変化が即座に売上や顧客満足度に直結する緊張感とやりがいは、まさに事業会社ならではの醍醐味だと感じています。
印象的だった成果やプロジェクトについて教えてください
最も手応えを感じたのは、Google介護施設系リスティング広告のクリエイティブ改善プロジェクトです。業界的に、CTRは0.5ポイント前後での上昇を目標に改善させていくのが通常のところ、今回は1ヵ月間でMoMで1.5ポイント向上させました。また、それに伴い、通常5~7%の改善が目標とされるCPAも15%改善することができました。
プロジェクト開始時点では、主力キーワード群のCTRが業界平均に対して低迷していました。競合他社が画一的な「安心・安全」訴求に偏る中で、どう差別化を図るかが課題でした。そこで、以下のような3つの手法で施策に取り組みました。

私が最初に着手したのは、過去18ヵ月分の広告文言パフォーマンスデータの定量分析です。BigQueryで約5,000件の広告文言を効果順にソートし、上位10%の共通パターンを抽出しました。同時に、より重要だったのが質的データの活用です。
施設見学後の顧客アンケート2,100件をAIで分析し、「入居の決め手」となった要素を特定しました。その結果、従来の「設備の充実度」より「スタッフの対応の温かさ」や「家族との面談時間の充実」が上位にランクインしていることが判明しました。
この洞察をもとに、広告文言を「最新設備完備の介護施設」から「ご家族様も安心していただける、心のこもったケアを提供」といった、感情的価値を前面に出した訴求にシフトしました。
さらに、画像入稿プロセスの半自動化も行いました。「みんなの介護」は全国58,000施設を掲載する業界最大規模のプラットフォームですが、これまで各施設の画像入稿は手作業に依存していました。私はPythonとGoogle Ads APIを組み合わせて、施設の特徴(立地、価格帯、サービス内容)に応じた画像を自動選定・入稿するシステムを構築しました。
技術的には、施設データベースと画像ライブラリを機械学習でマッチングさせ、A/Bテスト機能も組み込みました。これにより、従来1施設あたり15分かかっていた作業を平均2分に短縮し、同時に画像の訴求力も数値的に最適化できるようになりました。
結果として、主力キーワード群のCTRは1.5ポイント向上と大幅改善。さらに重要なのは、この成果が単発的なものではなく、システム化により継続的な最適化が可能になったことです。現在も毎週新しいクリエイティブパターンをテストし、常に改善し続けています。
前職と比べて、クーリエで働く魅力はどんなところにありますか?
最大の魅力は、「分析→仮説→実行→検証」の完全なサイクルを一人で回せる環境です。前職では、私が3ヵ月かけて作成した分析レポートがクライアントの社内調整で半年間塩漬けになったこともありました。一方クーリエでは、朝に発見した課題を夕方には施策として実装し、翌日には効果を確認できます。
例えば先週、特定の地域でCPAが急上昇していることを発見しました。前職なら「月次レポートで報告」で終わりでしたが、ここでは即座に原因分析を開始。競合他社の広告出稿量増加が要因と特定し、その日のうちに入札戦略を調整しました。結果、2日後にはCPAが正常値に戻り、週単位で数十万円のコスト削減を実現できました。
また、同じ専門性を持つメンバーとの日常的な議論が、私の成長を加速させています。特にデータサイエンス領域では、上席の大山から「なぜその分析手法を選んだのか」「他にどんなアプローチが考えられるか」といった本質的な問いを毎日投げかけられます。これにより、単なる「数字を出す人」から「数字から戦略を導く人」へと成長できていると実感しています。
さらに印象的なのは、失敗に対する組織の姿勢です。先月、新しい広告配信ロジックをテストした際、一時的にCTRが0.8%低下してしまいました。俗に言うと、やらかしたわけです(笑)。前職なら「大きな問題」として扱われたでしょうが、クーリエでは「貴重な学習機会」として捉えられ、失敗の要因分析から次の改善策まで、チーム全体でサポートしてもらえました。
この心理的安全性の高い環境があるからこそ、リスクを恐れずに新しい手法にチャレンジでき、結果として大きな成果につながっています。ヘルスケアという社会的意義の高い分野で、自分の専門性を最大限発揮できる環境は、データアナリストやデジタルマーケターとして理想的なキャリアの場だと確信しています。
AI時代を見据えたマーケターの生存戦略
今後クーリエでどのようなキャリアを描いていきたいですか?
目指しているのは、データと他分野を掛け合わせた専門人材になることです。まずは第一の項であるデータ力を徹底的に強化したいと考えています。
具体的には、データ出力の精度と速度の向上、「なぜそのデータを出すのか」という論理性の強化、そして「データから何を得られたのか」という解釈力の向上ですね。これらすべてがマーケターとして事業に貢献するために必要不可欠なスキルだと思っています。
将来的には、データ分析の領域を超えて、マーケティング戦略の立案や事業開発にも関わっていきたいです。クーリエの組織はフラットで、プロジェクトベースでのアサインも多いので、さまざまな分野にチャレンジできる環境が整っています。
データサイエンスの知見を活かしながら、CRMのスペシャリストとして顧客獲得の仕組みづくりに貢献したり、ゆくゆくは組織を牽引するジェネラリストとしてチーム運営にも挑戦してみたいですね。

直近では生成AIが台頭していますが、マーケターのキャリア観について、どのように考えていますか?
私がちょうど新卒で入社するタイミングでChatGPTが登場したこともあり、AI時代のキャリア形成については常に考えています。
確実に言えるのは、すべての職種で影響は避けられないということです。ただし、職種が完全になくなるわけではなく、人間にしかできない業務が残り、それ以外の業務は足切りされていくと予想しています。
だからこそ、ビジネスマンとして生き残るためには、スペシャリストになるか、できることの掛け算で独自性を確立するかが重要だと考えています。私の場合は、まずデータ分析のスペシャリストとしてのスキルを磨き、それを軸に他分野との掛け算を目指しています。
AIが得意な定型的な分析作業は任せつつ、人間にしかできない洞察や戦略立案、創造的な施策企画に注力していく。そんなマーケターになりたいと思っています。
クーリエのような成長企業では、変化に対応しながら新しいことにチャレンジし続ける姿勢が求められます。AI時代だからこそ、より人間らしい価値を提供できるマーケターを目指していきたいですね。
最後に、マーケティング職への転職を検討している方へメッセージをお願いします
マーケティング職への転職を検討している方には、ぜひクーリエという選択肢を考えていただきたいです。
特に、現在のキャリアで「自分の提案がどう成果に結びついているかわからない」「もっと事業に直接的な影響を与えたい」と感じている方にとって、クーリエは理想的な環境だと思います。
データ基盤が充実しており、分析から施策実行、効果測定まで一貫して経験できます。そして何より、失敗を恐れずチャレンジを推奨する文化があるので、未経験の分野でも積極的に挑戦できます。
スピード感は確かに速く、最初は戸惑うかもしれません。でも、チームメンバーや上司の方々が手厚くサポートしてくれるので、成長意欲があれば必ず適応できます。
AI時代を迎える今だからこそ、データドリブンなマーケティングスキルを身につけることは、将来のキャリアにとって大きな武器になります。ヘルスケアという社会課題解決にも貢献できる、非常にやりがいのある環境です。
頭をフル回転させて、質の高い時間を過ごしましょう。一緒に働ける日を楽しみにしています!